新型コロナで手指用消毒液の需要が高まっています。
どれもアルコールでしょって思うかもしれませんが、
よくよく成分表示を見ると、
有効成分が「ベンザルコニウム塩化物」というものもけっこうあります。
もちろんアルコール消毒液と言っていれば、
アルコール(エタノール)も含まれていますが、
あくまで、メインの消毒成分はベンザルコニウムということになります。
消毒薬といっても、有効成分が異なれば、
効果のある対象も変わってきます。
今回は「ベンザルコニウム塩化物」について理解しようと思います。
ベンザルコニウム塩化物とは
ベンザルコニウム塩化物は、陽イオン界面活性剤の一種です。
界面活性剤と聞くと、石鹸やシャンプーを思い浮かべますが、
実はこれらは陰イオン界面活性剤です。
ベンザルコニウム塩化物などの陽イオン界面活性剤は、
石鹸などとは逆の性質を持っていることから逆性石鹸と称されます。
電気的にプラスである特徴を生かして、
優れた殺菌力を発揮しているそうです。
無臭・無色で使い勝手が良いという特徴もあります。
例えば、会社などでよく見かけるアルボナースは、
有効成分がベンザルコニウム塩化物の消毒液です。
(エタノールも59%含まれています)
メリット
ベンザルコニウム塩化物のメリットですが、
調べたところ、大きく2点ありそうです。
一つは、
エタノールに比べて安価だということです。
原料が安ければ、商品価格も抑えられますので、
我々も手ごろな価格で手に入れることができます。
※上記に加えて、
エタノールだけの消毒液(原料はさとうきびや芋)は、
飲めることから酒税がかかります。
添加物を加えて飲めなくすることで、
酒税がかからなくなり、
商品価格を抑えることができるという話もあるようです。
もう一つは、
エタノールと違い除菌効果が長持ちすることです。
エタノールは揮発してしまったらその時点で殺菌力が無くなってしまうため、
どこか触るたびに消毒する必要があるので、
ベンザルコニウム塩化物の方が消毒回数を減らせる可能性があります。
注意点
殺菌対象
ベンザルコニウム塩化物は、低水準消毒薬と呼ばれてたりもします。
この辺りの理由は、
殺菌力を発揮する対象に関係があると思います。
ベンザルコニウム塩化物は、
- 一般細菌(大腸菌や黄色ブドウ球菌など)
- 酵母様真菌(カンジダなど)
に対して殺菌効果があります。
逆に、
- 細菌胞子(芽胞)
- 結核菌等の抗酸菌(マイコバクテリウム)
- ウイルス全般
- 真菌胞子
などに対しては、殺菌効果がありません(もしくは薄い)。
特に気を付けないといけないのはウイルスに関してだと思います。
インフルエンザやコロナウイルスに対して、
一部では効果が認められたという報告はあるそうですが、
エタノールに比べると殺菌効果は期待できません。
【追記】
5/22(金)に、経済産業省から、
以下の界面活性剤が新型コロナウイルスの除去に有効と発表がありました。
- 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
- アルキルグリコシド(0.1%以上)
- アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
- 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
- ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)が入っています。
アルコール消毒液不足の中、
一定の効果が認められたことは嬉しいことですね。
使用方法
ベンザルコニウム塩化物は陽イオン界面活性剤であり、
プラス電荷を持っています。
一方で、石鹸などは陰イオン界面活性剤であり、
マイナス電荷を持っています。
これらを合わせて使ってしまうと、
プラスとマイナスが打ち消されてしまい、
殺菌効果が無くなってしまいます。
同時に使用しないように注意が必要です。
また、ベンザルコニウム塩化物は、
汚れなどの有機物に触れることでも殺菌力が薄れてしまいます。
なので、しっかりと手を洗った後に、
手をよく乾かしてから使うことが最も効果的と言えます。
まとめ
ベンザルコニウム塩化物についてでした。
私も以前までは消毒液はどれも同じかなと思っていたのですが、
よくよく成分について勉強すると、
殺菌効果が違っていて、
何を期待するかで商品を選ぶ必要があることを知りました。
市販されている手指用の消毒液は、
ほとんどがエタノールも含まれているため、
細菌~ウイルスまで幅広く対応しているものが多いとは思いますが、
エタノール濃度は異なりますし、
各商品の特徴を理解して、
目的に合わせた消毒液を選ぶことが大切です。
皆様の商品選びの一助になれば幸いです。